主な症状
発達障害は、出生時から脳神経の発達のアンバランスさによって脳の働きに偏りが生じて日常生活、社会生活に支障をきたす病気です。発達障害の代表的な疾患としてASD(自閉症スペクトラム障害)とADHD(注意欠陥・多動性障害)があります。
ASDは社会コミュニケーション能力の障害、柔軟性の欠如や興味の限局、感覚の過敏さもしくは鈍感さなどの症状を特徴とする疾患です。患者さんは抽象的な内容のことや雰囲気、他者の意図を理解することがむずかしく、周囲の人とコミュニケーションのいき違いがしばしば生じます。また、臨機応変に対処することがむずかしく予定外の出来事にパニックになったりイライラする、好き嫌いが極端で興味のないことに全然関心を示さず好きなことにのめり込むと周りが見えなくなることがあります。さらに明るさや音、皮膚感覚に過敏となることや、一方で部屋が散らかっていることに無関心でやるべきことになかなか取り組めないといった鈍感さが併存することがあります。
ADHDは不注意・集中力の散漫さや多動、衝動的あるいは短絡的行動などの症状を特徴とする疾患です。幼少期から忘れ物や落とし物が多い、整理整頓ができない、すぐに気が散ることや、じっと待てない、落ち着きなく動き回ること、また怒りっぽさや欲しいものを深く考えず買う、借金をするなどの症状を認めます。ADHDはある一つの状況だけでなく、自宅や学校、職場など複数の異なる状況でこれらの症状を認めるかを確認することが大切です。
発達障害の症状は個人差が大きく、症状の軽い患者さんほど幼少期にはあまり問題が目立たないことが多く、青年期以降にうまく社会に適応できず問題が表面化することがみられます。このため、仕事がうまくいかず、うつ症状や不安などさまざまな精神症状を合併して、はじめて病院を受診することも多いです。
治療方針
ADHDの治療は注意力・集中力に合わせた環境調整、衝動的・短絡的な行動を減らす行動療法、そして薬物療法を組み合わせておこなわれます。ADHD治療薬としてはメチルフェニデート徐放薬(コンサータ)、アトモキセチン(ストラテラ)、グアンファシン(インチュニブ)の3種類が使用されます。
ASDの治療は本人の特性に合わせて環境を調整したり、こだわりや決まった行動パターンを周囲に適応できるよう徐々に修正したりすることが治療の中心となります。アドリブやイレギュラーな出来事への対応が苦手なことが多く、あらかじめ先の予定が見通せると安定した社会生活に繋がります。耳からの情報よりもテキストや図など目からの情報の方が理解しやすいなど伝え方の工夫も必要です。根本的治療薬はまだありませんが、衝動性やイライラ、常同行動などの緩和のために対症的に抗精神病薬が使用されることもあります。