主な症状
社交恐怖症は、会議や授業中などの場面で話す、字を書く、食事をする状況や、公衆トイレを使う、少人数の集まりに参加する状況で、過剰な不安・緊張や身体症状をみとめる病気です。一般的には家族や親しい友人などの近い人間関係や、逆に全く面識のない他人の前では苦痛は少なく、その中間的な距離感の人(学校の同級生、職場の同僚や上司、仕事相手など)を前にしたときに顕在化しやすい事が多くみられます。このような緊張場面において、過剰な不安や、動悸、発汗、めまい、吐き気、赤面、尿意といった身体症状を認め、苦痛を避けるためにしばしば緊張場面を回避するようになります。患者さんはこのような症状が過剰で不合理なものであると理解していますが、不安を制御することがむずかしいです。このため、自分に対する自信がなくなり、抑うつ症状を合併することもみられます。また周囲の人は患者さんの苦痛が実感しにくいためになかなか共感することができず、患者さんがますます孤立して病気が悪くなってしまいます。このようにして病気が慢性化することで、うつ病やパーソナリティ障害といった精神疾患を合併し、自宅にひきこもるようになってしまうことがあるため、早期発見・治療をおこなうことが大切です。
治療方針
社交恐怖症の治療は抗うつ薬や抗不安薬による薬物療法と、心理教育や認知行動療法をおこないます。薬物療法は選択的セロトニン再取り込み阻害薬を中心とした抗うつ薬が中心となり、発作の誘発や不安の軽減を図ります。これに加えて、速やかな抗不安効果があるベンゾジアゼピン系抗不安薬を必要に応じて併用します。また、自分が不安に感じる状況を回避し続けると、ますます社交恐怖の症状が悪化することが多いため、自分の我慢できる不安な状況になるべく暴露することで耐性をつけていくことが重要になります。患者さんはしばしば「他人からみて自分はどう思われているのか」ということに囚われがちとなって些細な表情や口調の変化に敏感となっていることがみられます。このような他人の評価に対する囚われを再評価して捉え方を徐々に変えていくことで不安を軽くしていきます。