主な症状
身体症状症は検査で明らかな異常がみられないにも関わらず、体のさまざまな部位の疼痛、めまい、ふらつき、しびれといったさまざまな身体症状を認め、日常生活に支障を生じる病気です。患者さんは身体症状について強い不安を感じていて、四六時中身体症状のことばかりを考えてしまい、その原因を探すために、しばしばいくつも病院を受診して検査を受けるなどします。また病気不安症は、症状がない、もしくは軽い体の違和感に対して「なにか悪い病気にかかっているのではないか」と過剰な不安にとらわれてしまい、日常生活に支障を生じる病気です。これらは、心理的な要因によって症状が左右されやすいことがしばしば認められますが、患者さん自身がそれを自覚されることは少ないです。両疾患とも身体症状に対するとらわれから日常生活の活動性が低下して閉じこもりがちの生活になることや、うつや不安を呈することがみられます。病気が慢性化すると生活機能が低下し、うつ病やパーソナリティ障害、アルコールなど物質使用障害といった他の精神疾患を合併することがあります。
治療方針
身体症状症の治療はしばしば併発する抑うつ症状や不安に対して抗うつ薬や抗不安薬による対症療法的な薬物療法をおこないつつ、心理教育や認知行動療法をおこないます。患者さんは身体症状へのとらわれが強く、身体的な検査を頻回に受けて病気の原因を探そうとすることがあります。しかし、頻回に検査を受けることは患者さんの安心にはつながらず、不安耐性をむしろ下げて病気を悪化させてしまう可能性があります。このため、客観的な評価や確認をするときにある程度限っておこなうことがよいと考えられます。また、身体症状の辛さに過度にとらわれて日常生活が制限されることが多いため、辛さを受け入れながら規則正しい生活をすること、体を動かすこと、できる趣味を楽しむことを積極的におこなっていくことが大切になります。身体症状が悪くなるときには何らかの心理的な背景があることが多く、ストレスへの耐性を上げていくことや問題への対処を検討していくことで症状の軽減を図ります。